世界の電鍵コレクターたち 

■リン・バーリンゲイム
N7CFO
Lynn Burlingame
 アメリカの著名な電鍵コレクターで、かつ電信学の権威。アメリカ人同士でも男性か女性か分からないと言われるそうだが、男性である。
 米国西海岸のワシントン州シアトル市郊外のベルビューに在住。ベルビューはマイクロソフト本社に近く、日本のハイテク企業の駐在員が多く住んでいる地区である。
 電鍵コレクター歴は20年以上。1992年から「N7CFOキーレター」という英文の小冊子を発行している(有料で購入できる)。また全世界の電鍵コレクター向けに「モールスコード」というメーリングリストも運営している。
電鍵コレクター必見のホームページ

チャボック・キー

© N7CFO



■ラッセル・クライマン
Russ Kleinman(Russell Kleinman)
「スパークキー評論」(The Sparks Telegraph Review)というホームページを運営していることで知られる電鍵コレクター。
 いきなりマルコーニの電鍵の写真2葉が並び、さらに膨大なというしかない電鍵コレクションの数々のカラー写真が我々に迫ってくる。



■デイブ・イングラム
K4TWJ
Dave Ingram
 「Keys, Keys, Keys」(米国CQコミュニケーションズ・インク発行、1991年)という電鍵図鑑を執筆したことで知られる米国アマチュア無線界の重鎮。CQマガジンのコラムニストでもある。アンテナ設計などの著書もある。



■ジョージ・バレンタイン
KK4DW
George David Ballentine / Dave
米国フロリダ州オーランド在住。
住所: 639 E AMELIA ST ORLANDO FL 32803-5363 USA
 ジョージは米国フロリダ州オーランドで生まれ育った。二人の娘さんと10歳代のお孫さんがいる。

 1960年12月に1級電話無線技士(レーダー操作を含む)の資格を取得。
 技術系学校を卒業後、1961年1月から1970年4月までRCAミサイル実験プロジェクトに参加する。
 その後、フロリダ半島東方のバハマ諸島に移住、2年半ほど滞在し、コリンズのHF送信機、リニアアンプ、受信機に親しむ。
 後にインド洋のセーシェル諸島のマエへ移住、5年余り暮らす。そこで現在の奥さんのモーリンと出逢い、結婚し、現地で娘2人が生まれた。
 1980年8月、フロリダに戻って電話会社に勤務。20年間というものフロリダで通信技術者として働き、2000年1月に退職した。
 この間、多数の部品や真空管が、トランジスタやICチップに置き換えられていくのを目の当たりにして万感の想いがしたという。そしてアナログ通信からデジタル通信へと変わっていく時代の潮流にも驚きを禁じ得なかった。
 ついには通信網はSONET(コンピュータ通信を中心とする高度な光ファイバ通信網)へと置き換えられたことに目を見張った。またパラボラアンテナのマイクロウエーブは、光ファイバー網やADSL網へと変遷していった。
 本格的なハムライフは1986年から。アクティブバンドは14.058MHzと21.058MHz。もし彼がアマチュア無線と出逢うことが無かったら、おそらく庭の芝刈りや、鱒釣りや、ガレージセールに明け暮れていたのかもしれない。ジョージは電鍵のコレクションだけでなく、古い計算尺や魚釣りのルアーも収集している。
 ジョージは毎週平日、奥さんとYMCAに通っている。フィットネスマシンで体力を鍛えるのも怠らない。それは食欲との闘いでもある。
 ジョージいわく
「僅かばかりの電鍵コレクションだが、それでも常日頃、ストレートキーの収集に努めている。わたしが好きなのは、個人が職人芸で少量生産した個性的な電鍵である」
「KK4DWの電鍵コレクション」(The KK4DW Telegraph Key Collection)

Schurrのパドル

© KK4DW



■トム・ペレラ
W1TP
Tom Perera
 米国ニュージャージー州立モントクレア大学教授。世界で最も著名な電鍵の研究家・コレクターの一人である。なぜかトム・ペレラの頭文字がコールサインになっている。

トム・ペレラ(中央)

「W1TPの電信科学展示館」(W1TP TELEGRAPH & SCIENTIFIC INSTRUMENT MUSEUMS)
 電信が全米に普及し始めた1881年〜1950年の電鍵、ジョンソンのバグキー「Speed-X」、マッケロイの「Mac-Key」、米軍の電鍵、そしてヨーロッパや日本の電鍵の写真とイラストが多数掲載されている。



■マーレイ・ウィラー
VE3FRX
Murray Willer
 トロント在住のカナダ人男性の電鍵コレクター(1913-2004)。電鍵コレクションの書籍を著したり、AWA(アンティークワイヤレス協会)の電信学セミナーで講師を務めたこともある。また信号旗の名手でもある。2004年にサイレントキーとなった。


Photo by W1TP



■マーシャル・エム
N1FN / VK5FN
Marshall Emm
会社の住所: 10691 E. Bethany Dr., Suite 800 Aurora, CO 80014 USA
電話: (303) 752-3382
会社のメールアドレス: info@MorseX.com
 米国コロラド州デンバーの南郊外に在住。電鍵ショップ「モールスエクスプレス」(Morse Express)のオーナー。1940年代後半生まれ。オーストラリアのコールサインのVK5FNも保持している。
 サミーというQRP犬を可愛がっている愛犬家。なんとこのワンちゃんはモールス信号を理解するという。たとえばOK(−−− −・−)と口笛を吹くと「車に乗ろう!」という意味なので走ってくるそうだ。

 N1FNの電鍵ページ「わたしの大好きなキーたち」(N1FN's "Key Page" Some of my favorite keys...)に32枚の華やかな電鍵のカラー写真が掲載されている。

マーシャルのコレクションの一つで“アペル”という珍しくて美しい電鍵

 なお、「モールスエクスプレス」は米国コロラド州にある世界最大のモールス通信関連品の販売店であり、1997年前後から世界の電鍵をイギリスなど7ヵ国から輸入し始めた結果、初年度で電鍵だけで1,000個を超える売上高を記録した。



■チアルーチ・エリッセオ
IK6BAK
Chiarucci Eliseo
住所: 61030 Montefelcino - Pesaro - ITALY(イタリア)
「IK6BAKの電鍵コレクション」(ik6bak Telegraph key collection)
 チアルーチはイタリア人。イタリアの電鍵の収集ではピカイチ。凄い!
 見たことも聞いたこともないような電鍵がズラリとカラー写真やイラストで紹介されている。たとえばミラノのテラネオをはじめ、フォルシエリ、マキネッタテレグラフィカなどなど。他にイギリス、ドイツ、フランス、カナダ、アメリカ、旧ソ連などの電鍵が多数。



■アダム・N
N4EKV
Adam N.
住所: 米国カリフォルニア州サンフランシスコ市の北郊外にあるコントラコスタ郡。
 1963年生まれのアメリカ人。1979年4月にバージニア州でノビス級(初級)ライセンスのKA4GYVのコールサインを取ったのがアマチュア無線の始まり。2000年6月に双子の娘さんが誕生。

絢爛豪華な「アマチュア無線局 N4EKV の電信キー展示館」(Amateur Radio Station N4EKV Telegraph Keys)にはバグキーが多い。

Standard Radio Co(New York)のバグキー



■ランディ・コール
KN6W
Randy Cole
 著名な電鍵コレクターの一人。バイブロプレックスのコレクションで知られるアメリカ人。

1905年の最初のバイブロプレックスモデル

ここは「バイブロプレックス・コレクター」(The Vibroplex Collector's Page)バイブロプレックスのバグキーのことなら何でもわかる ホームページ。
この「初期のバイブロプレックス」に1905年の最初のモデル(シリアルナンバーは400〜1,286)のバイブロプレックスがカラー写真で紹介されている。
ここ「後期のバイブロプレックス」も見逃せない。



■ルイーズ・モロー
Louise Moreau
 米国の電鍵史を中心に据えた「電鍵物語」(The Story of the Key)という書籍の著者であり、また自宅の一室に棚やガラスのショーケースを設置して膨大な電鍵を収集してきた女性コレクターでもある。1908年製造のメコグラフ(Mecograph)キーが非常に珍しい。風変わりなバイブロプレックスもある。AWA(アンティークワイヤレス協会)に所属していたが、1994年に他界した。


by AWA

「ルイーズのコレクション写真館」(Louise Moreau Collection Photos, by AWA)



■トーマス・シェラー
OZ2CPU
Thomas Scherrer
デンマーク・コペンハーゲンに在住。

「OZ2CPUの電鍵コレクション」(OZ2CPU Morse keys collection)
 圧巻! カラフルな電鍵の写真にびっくり。ほとんどが珍しい縦振れ電鍵。



■デイビッド・スミス
ZL2BBB
David Smith
ニュージーランド在住の電鍵コレクター。

「ニュージーランド W/T スクラップブック」(A New Zealand W/T Scrapbook)
 珍しいニュージーランドの電鍵がズラリ勢揃い。ストレートキー、バグキー、パドルなどを見ることができる。ニュージーランドの電鍵メーカー各社(ピーター・バイヤムなど)の連絡先も掲載されている。



■フローレンツォ・カフォリオ
IZ1CQN
Florenzo Caforio
イタリア北西部のトリノ在住のアマチュア無線家。
「わたしの小さなコレクション」(La Mia Piccola Collezione)
 イタリアの電鍵のほか東欧のものも見られる。



■グレッグ・グリーンウッド
WB6FZH
Greg Greenwood
 アメリカ合衆国カリフォルニア州に在住。米軍のクラシックな軍用キーの写真や資料を公開している。
「クラシック軍用無線機」(Classic & Military RADIO)



■スティーブ・マッセイ
N6TT / K6KEY
Steve Massey
 1963年(11歳のとき)から40年以上もモールス通信に生きてきたヒゲのアメリカ西部男。ノビス級のときはWN6SSO、その後はWB6SSO、WA7ZVV、N7AHN、そして現在は「N6TT」と「K6KEY」のコールサインを取得している。
 アメリカでもKEYの3文字のコールサインは数えるほどしかない。さらに電信(CW)だけでWAZ、WAC、DXCCを総なめ。こうして300カントリー以上を稼いだDX'erにしてCW'er。サミュエル・モールスとレオナルド・ダ・ビンチに傾倒。
 ここ「電信無線の世界」(The Telegraph Wireless World)にスティーブの各種のコレクションが掲載されている。



■トム・フレンチ
W1IMQ
Tom French
アーティファクス・ブックス(ARTIFAX BOOKS)のオーナー
会社の住所: 151 Barton Road Stow MA 01775 USA
 トム・フレンチは米国マサチュセッツ州に在住。趣味はアマチュア無線、電鍵コレクション、電鍵史研究。
 1990年に米国マサチュセッツ州で「アーティファクス・ブックス」(Artifax Books)を創業。1992年にトム・フレンチ自身を著者とする「電鍵コレクターガイドシリーズ」(key collectors' books)の刊行を開始した。
 初年度は、サミュエル・モールスの助手だったアルフレッド・ベイルにちなんで「電鍵コレクターのためのベイル・コレスポンダント」(The Vail Correspondent [TVC] key collectors' quarterly journal)という季刊誌を発行。1998年夏の第24号を最後に廃刊した。
 トム・フレンチの名著と言われた「バイブロプレックス・コレクターズガイド」(Vibroplex Collector's Guide)は、2001年の第三版を最後に絶版となっているため、入手が難しい。
アーティファクス・ブックスのサイトで公開している電鍵(時価2,000ドル以上の電鍵もある)



■ゲリー・マイラ
KA2MGE
Gerry Maira
「KA2MGEの電信博物館」
 KA2MGEの電信博物館(KA2MGE TELEGRAPH MUSEUM)を公開している。1860年代に製作されたアメリカンテレグラフ社のキャメルバック電鍵(フェルプス作)など多数が展示されている。

軍の通信隊のためにマルコーニ無線会社が開発した1917年製のスパークキー。
空冷により250V/50Aの交流電流に耐えて5KWを送信する能力がある。


© KA2MGE



■ジョン・オートン
WA6BOB
John Orton
 アメリカ合衆国カリフォルニア州に在住するアメリカ人男性エンジニア。モールス通信と美しい電鍵に関心を持つ。他にコンテスト、RTTYなどアマチュア無線に対する関心は広く、その知識を公開している。
ジョン・オートンのトップページ



■ARRL A-1 オペレータークラブ
ARRL The A-1 Operator Club
 A1を愛好する人たちが集まる米国ARRLの関連部門。マーシャル・エムらアメリカ人の電鍵コレクター多数に混じって、JA1AAら日本人や日系人も多数会員になっている。
ARRL A-1 オペレータークラブ



■アンティークワイヤレス協会
AWA(Antique Wireless Association)
毎年9月にニューヨーク州ロチェスターで年次会合を開催している団体。主目的は無線電気通信の歴史研究と電鍵のコレクションで、電鍵コレクターたちが会員の圧倒的多数を占める。年次会合では電鍵の蚤の市やオークションが人気を集めている。ニューヨークの東ブルームフィールド(East Bloomfield New York)にあるAWA博物館には電鍵や電信通信機が展示されており、その数は世界有数の規模である。

アンティークワイヤレス協会のホームページ(ブルース・ケリーがAWA博物館で打鍵しているところ)

AWA博物館の紹介ページ



■FISTS
 The International Morse Preservation Society
 フィスツ(国際モールス保存協会)
 「国際モールス保存協会」(The International Morse Preservation Society)の別名。フィスト(手)を動かしてCWのQSOをして仲間を増やすことをスローガンにしている。

国際モールス保存協会の本部



■カナダアマチュア無線家協会
RAC(Radio Amateurs of Canada)
メールアドレス(ウエッブマスタ): opsinfo@rac.ca
住所: 720 Belfast Road, Suite 217, Ottawa, ON, K1G 0Z5
電話: (613) 244-4367
ファックス: (613) 244-4369
 モールス通信とCWを合い言葉にしているカナダのアマチュア無線団体。オタワに事務局がある。モールス通信の愛好家や電鍵コレクターが集中している。
 パドルにシリアル番号を刻印して限定生産しているドナルド・ヘンズレー(Donald Hensley)の「Hensley Paddle」というパドルが珍しい。
「キー、パドル、そしてキーヤー」(Keys, Paddles and Keyers)
「ドナルド・ヘンズレーの手作りパドル」(Handcrafted Paddles by Donald Hensley)



■サルバトーレ・カンツォーネリ
IK1OJM
Salvatore Canzoneri
住所: C.SO TORTONA 9 10153 TORINO TO ITALY
「IK1OJMのホームメイド・アルトリキーヤー展示館」(IK1OJM Home made morse keys & paddles)
奇抜で華麗で宝石のような電鍵がここにも!
 記述はイタリア語。可愛い個性的な電鍵たちの写真が勢揃い。
サルバトーレは電信の普及に注力していることがイタリア国内のアマチュア無線界で良く知られており、この A.R.I.(イタリア・アマチュア無線協会:Associazione Radioamatori Italiani / Italian Amateur Radio Association)でも彼の尽力を賞賛している。A.R.I.の本部はトリノ(piazza Fontanesi 3, 10153 Torino, Italy)にある。 Phone: 0339-8482833



■西田 清作氏
JE1NVN
Seisaku Nishida
住所: 茨城県つくば市
 1949年、富山県に生まれる。1972年、東京都世田谷区でJE1NVNを開局。1977年、茨城県へQSY。同県の土浦アマチュア無線クラブ員。2003年にJARL会員30年表彰を受けた。
 コレクションを始めたきっかけは、ARDFゲームで電信に目覚めてから電鍵を購入したことだった。
 【注】ARDF(Amateur Radio Direction Finding)とはアマチュア無線の方向探査競技で 144MHz か 3.5MHz のCW電波の発信源を追い求めて発見するもの。

 そのとき、関東各地の販売店を回った結果、ベンチャーパドルを購入した。これがなぜかパドル部が丸い型であり、当時ハム月販のみで販売されていた。珍品ゆえの優越感で有頂天になったが、あまりうまく操作できず、箱入りのままとなり、ために縦振り電鍵を求めてアマチュア無線雑誌の交換室などで多くを入手した。
 オークション等で求めた結果、コレクションは200台を超え、部屋が一杯に。時折、オリジナルのバージョン違いの物を見つけた時は興奮するという。OM局、並びに多くの収集家の方に会えるのを楽しみにしている。
 この写真は、最近になってコレクションとして入手したという、古い練習用の発信機とレシーバー、そして練習電鍵。銘板には「昭和17年九九式電信符練習機山中電機株式会社」とある。
 横にあるのは、ハイモンドのモールス信号機セット(復刻版逓信省製東北支部限定品)である。



■宮城 操氏
JR6BU
Misao Miyagi
 沖縄県那覇市在住の電鍵コレクター。日本製のストレートキーを中心にコレクション多数。
 1963年にKR8BUとして開局、1972年の本土復帰後にJR6BUとなる。CWを中心に、ほぼ毎日無線を楽しんでいる。40年余のアマチュア無線歴によりDXCCは332エンティティ。あとはKG4、BH7、CY9の3つを残すのみ。しかもこの3つもQSOをしているがQSLが届いていないという。50MHzのDXCCも意外性を見つけてQSO数は127c、コンファームは119となった。
 CWが好きで、電鍵をいろいろ使用していたら、いつのまにか30個ほどになり、コレクションが始まった。現在、91種/102個を所持している。

宮城氏のコレクション「BK100」

宮城氏のコレクション「サンユウテックのパドル」



■木村 平助氏
JA1DVV
Heisuke Kimura
 群馬県桐生市に在住の電鍵コレクター。第二次世界大戦勃発のころ桐生市に生まれた。
 三方を上毛三山に囲まれた盆地にシャックがある。正面には国定忠治で語られる赤城連峰、裾野を接して西寄りにはワカサギ釣のできる湖水をたたえた榛名山、その隣には紅葉で有名な奇岩の妙義山、遠く長野県境には浅間山。日光連山からの渡良瀬川が近くを流れ、遠く利根川へと流れを進め、自然には恵まれた環境で産声をあげる。
 子供の頃、父親が知り合いからもらってきた立派な木箱は、なにか子供心にもメカニックぽいものだった。今思い出せば、それは大型の積層電池の収納スペースがあり、銀色に光った電球らしき物が電池管で数本立っていた。白い絹巻線が立体配線されていた。
 何の知識もない少年は、有り合わせの工具で、ただひたすら解体した。この解体経験と、数年後に近所のお兄さんに教えてもらいながら鉱石ラヂオを組み立てられたことは電子工作の楽しみを邁進させてくれた。
 放送局から100キロも離れた地方で、レシーバーを丼椀にかぶせ 多少大きく聞こえる放送に耳を澄ませて満足した。
 その後、アマチュア無線の初級者向け資格制度がスタートしたのをきっかけに 電話級、電信級、と免許を受け、同時に上級の機械を自作して海外放送のリスナーとして楽しんでいた。V.O.A.がハワイやアフリカのタンジール、そしてシンガポールなどからの中継で放送しているのを知ったのもこの頃だった。7月7日(ラジオ・ノーべ・デ・ジュール)と言うエクワドルのキトーからワタナベ・テイゾウと言う方が日本語でアナウンスされていた。ラジオ・オーストラリアの安定した電波に比べ、スイスやモナコからの受信には苦労したという。
 こんなことがあって局免許が下りる頃には2級の資格も手に入り、愈々無線機の製作をして交信の第一歩になった。地元の先輩が親切に教えてくれたので結構エキサイトしたという。
 その後、電信による電波伝播が素晴らしいことを知り、暫らく縦ブレ電鍵での交信 を楽しんだが、一つ二つと替えて打つうちに電鍵のメカニズムに興味を持つようになり、コレクションの始まりになった。
 欲しい電鍵はごまんとあったが、なかなか手に入らず、ある時、海外の仲間からコレクターが集うM.M.(モールサム・マグネフィケイト)誌を紹介され、購読を始めるなかで電鍵の形や 使用する環境での特異性、国民性による違いなど、時代背景だけではない メカニズムの特徴に先人の知恵や苦労が沢山込められていることを発見し有り難く考えるようになってきた。
 イグニッション・ノイズの電波をコントロールした頃の電鍵は接点の火花防止と冷 却のために、水銀やオイルなどを使っていただろうし、埃や海水などの雰囲気の悪いところでは防塵、防水カバーが必要で、いろいろと工夫が施されて今日にいたったものであろうから、電鍵の一つ一つは、ただのスイッチ、されど素晴らしいスイッチなのだと思っているという。
 電鍵の収集ではK4TWJ(Dave Ingram)氏の”Keys' Keys' Keys”、W1TP(Thomas B. Perera)氏の"Telegraph Collector's Guide"、CQ出版社発行の”モールス通信”などの書籍が大変参考になったが、何と言っても”M.M."(MorsumMagnificat)は いろいろと情報を届けてくれた。
 ベルギーからFons Vanden Berghen氏が纏めた”CLASSICS OF COMMUNICATION"は 初期の電信機材を惚れ惚れするほど立派に紹介している。DL1BFE(Gregor Ulsamer)氏は 往年のドイツの電鍵を”Morsetasten”で紹介してくれている。
米軍用のJ-Series KeyではWD6DTC(Larry Nutting)氏が纏めた"J-Series Telegraph Keys of the U.S.Army Signal Corps"がSignal CorpsのJ-1からJ-51のシリーズほかを紹介しており、参考になる資料であった。
ニューヨーク郊外にあるA.W.A.ミュージアムの展示室のコレクションには圧倒された。そして、フリー・マーケットであのTomにもコンタクトを取ることが出来、幾つかの電鍵を分譲してもらい感激した思い出もある。しかし9月11日のテロ騒動以降、ご無沙汰が続いている。そのA.W.A.より"THE AWA REVIEW" が発行されているが、Vol,8と Vol,14.は Key関連の写真が多彩で参考になっている。
 J.A.R.L.の技術展示室(いまは調布の日本電気通信大学へ移管)でも多くの寄贈品を拝見する事ができた。少しずつ周辺の資料も整備でき、電鍵も500個ほどの数となった。
 プロの世界ではG.M.D.S.S などの導入でモールス通信は使用されなくなったが、これからは残されたアマチュア無線界のなかで永く活躍してくれることを念ずるのみである。そして、活躍後はゴミに捨てられるのではなく 余生をキチンと管理のできるコレクターの下へおさまれればなと思い、収集品を大切に保存していきたいという。


二重通信電鍵   ©JA1DVV


ビンテージな通信機材   ©JA1DVV



■内田 重雄氏
JA1OYB
Shigeo Uchida
 東京都小平市に在住の電鍵コレクター。
中学の頃、物置に旧陸軍の電池式無線機が何台もあり、部品取りと称してバラバラにして遊んだ。今思うと馬鹿なことをしたなと後悔・・・。その頃よりラジオに興味が出てきて「初歩のラジオ」を購読するようになり鉱石ラジオ、並三、高一、5球スーパーとラジオ少年のお決まりの道をたどり、たまたま本屋で見っけたCQ出版の「中学生のハム入門」、「アマチュア無線入門」の本を購入、だんだんとハムの世界へ。
 10ワットのフォーンだけでは進歩がないと電信をやるようになったが、サトーパーツの安物の電鍵しか無く、秋葉原のトヨムラで買ったのが電通精機のHK103。大理石の台で、ズッシリして、銀接点で、ソフトで素晴らしかった思い出があるという。
 電信をやり始めると色気が出て、綺麗に早く打とうとして手崩れを起こし、汚い符号になり、他の電鍵ならどうかなといろいろ購入したのが収集の始まり。
 その後、CQ誌で、加古川市にある「BM」というアメジャン専門店の広告を見ていたら、軍用電鍵が国産の電鍵より安く、これからはプロでは必要が無くなるので希少価値が出ると思い、軍用を専門に収集を始めた。しかし最近では収集する人が多く、安く手に入らないので、気長に収集しているという。
 昭和39年(1964)2月19日付けでコールサイン。第一声は同年3月20日。3.5MHzのA3でQSO。
 昭和41年(1966)電信級アマチュア無線技師免許、昭和44年(1969)2級アマチュア無線技師免許。
全国CW同好会(通称KCJ)に昭和55年(1980)に入会。
メインリグは、HFがFT-1011、50MHzがIC-756PRO II、144/430MHzがFT-736。アンテナは7-21MHzの4エレ・トライバンダー。50MHzは7エレ八木、144/430MHzは2段GP。
 2004年夏より定年退職で悠々自適。


 ©JA1OYB


電通精機(のちのハイモンド)の FK-3 複式電鍵 ©JA1OYB



■藤谷 光信氏
JA4BVC
Koshin Fujitani
 山口県岩国市に在住の電鍵コレクター。コレクター歴は1970年代から。海自、北欧、マルコーニ、旧日本陸軍の軍用、有線電信用など約300台の電鍵を保有。
 昭和12年(1937)1月1日生まれ。龍谷大学を卒業、浄土真宗教蓮寺の住職となる。藤谷学園岩国南幼稚園理事長、園長。山口県議会議員4期、岩国市議会議員4期。
 家庭では妻、長男、長男の妻、孫2人の6人家族。小学校3年のときにCWの手ほどきを受ける。当時は戦時一色、CWは軍人の常識、海軍の軍人に習う。その後、アマチュア無線の免許を取るために独学。第2級アマチュア無線技士。
 談話「これからは電鍵が無くなる時代なので、現在の電鍵所有者は整理方法や仕訳、型番などを統一して分類したら良いと思う」。


旧日本軍の電鍵の群 ©JA4BVC


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